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1979年6月9日に120分枠で放送された作品です。原作は「妖虫」です。妖虫はここでは、さそりのことを言うということで、土曜ワイド劇場のタイトルになっています。原作では、赤いさそりを名乗る狂気の犯罪者が美女たちを次々と殺害し、現場には「悪魔の紋章」として、赤いサソリの絵が描かれているという犯罪を繰り返すのです。そして、ドラマと大きく違う点は明智とは違う別の私立探偵「三笠竜介」が登場して事件を捜査する作品です。
そして作風も大女優のバラバラ殺人、銀座街頭のショーウィンドウへの死体の陳列や少女誘拐、探偵と犯人の変装対決など、江戸川乱歩らしい作品で、大衆受けもかなりよかったということです。前回の投稿でも紹介しましたが、本格ミステリー小説を書きたかった乱歩は、この時期はかなり悩み、しばらく執筆活動を休んだという経緯もあったそうです。
そこは、オーディションの最終審査の会場、演技が終わり結果の発表された場面です。大宝映画夏の新作「燃える女」のヒロインである眉月ゆかりの選抜で女王に選ばれたのが、春川月子でした。
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準女王に甘んじたのが相川珠子(野平ゆき)、この結果に納得のいかない彼女と、義理の姉の櫻井品子(永島映子)は最初から決まっていた出来レースだと不満を漏らしていました。
舞台上では、恋人役の男優・吉野圭一郎が女王春川月子に王冠を戴冠させていました。頭に載せたその瞬間、天井から照明が落ちてきたのです。間一髪難を真逃れた二人でした。ここから、静かに殺人鬼の残忍な犯罪が始まるのです。
いよいよ「燃える女」のロケが始まりました。皮肉にもそのロケは、品子と珠子の自宅近くの公園で行われていました。
ロケを見に行きたい珠子でしたが、品子は、頑なに拒みます。ピアニストでもある品子は、ピアノに情熱をかける主人公を演じるのは、自分がふさわしいと思ったからです。
ロケが行われている公園を偶然通りかかった明智事務所の面々、ロケを見学しながら助手の文代は、月子が吉野圭一郎の愛人で、最初から主演女優に選ばれることが決まっていたのだ、と明智に説明していました。しかし明智の視線は、一人佇む黒づくめの男にありました。
公園でロケを見学する明智事務所メンバー
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その男もまた、その視線をじっと二人の俳優、吉野圭一郎と月子に向けていたのです。
吉野圭一郎もその視線に気づいたのか「あいつが来たんだ!」と恐れの表情を露にして逃げるように車に乗ると、撮影現場を後にしてしまいます。
そして、黒ずくめの男もまた、その場から姿を消してしまいます。その後圭一郎は月子とともに失踪してしまい、大きなニュースとなってしまいました。
あるきっかけで、二人の消息を知るようになった品子と珠子は、念仏堂の裏の空き家にその姿を求めて訪れると、何者かが、二人に手をかける場面にでくわします。警察に通報する彼女たち!ここからこ映画のオーディションにまつわる連続殺人事件が始まります。
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この土曜ワイド劇場の美女シリーズ、回を追うごとに、奥行きが増してきます。原作では、少年探偵団の団長小林少年は、助手の小林くんとして登場しています。先輩助手の文代とともに地道に証拠集めをして、明智にアシストをする姿が、物語の奥行きを与えます。余談ですが、小林くんは今回で3目回、文代との息もピッタリというか、文代に頭が上がらない会話がまた楽しく、緊迫したドラマに清涼感をあたえていますね。
怪我をした明智を気遣う文代と波越警部
事件関係者に寄り添い事情を深く聞く明智小五郎
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さらに今回は犯人が明智に変装して、相談者に暴行を加え拉致するとか、今までと違うトリックが準備されていました。そしてなにより犯人が犯人とならざるを得なかった悲しい事情や共犯者の悲しみなどを、うまく劇中で表現してくれています。
ちょっとエッチでホラーなドラマだけでないこの江戸川乱歩シリーズとなっており、前回の黒蜥蜴を元にした悪魔のような美女とともに傑作と名高い作品に仕上がっていて、とても見応えがあります。ファンの間でも評価が高いといわれているようです。
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